かくまくかいよう 角膜潰瘍 [猫]
概要
角膜が欠損する病気です。
基礎知識
角膜は4層の組織からできています。
上皮(第1層)の欠損の場合は「角膜びらん」と言い、実質(第2層)にまで損傷が及んでいるものを「角膜潰瘍」と言います。角膜の全層にまで損傷が及ぶと、角膜に穴が開く「角膜穿孔(かくまくせんこう)」が生じて失明に至ることがあります。
原因
原因には以下のようなものがあります。
・外傷(ケンカ時の爪による傷など)
・異物による刺激
・感染(ヘルペスウイルスなど)
眼瞼内反症・外反症などでまぶたが閉じ切らなかったり涙の量が少なくなることなども原因となります。
ウイルス・細菌感染や長期的な角膜への刺激がある場合は症状の悪化や慢性化を引き起こします。
症状
痛みによる目のしょぼつき、涙の量の増加、角膜の一部が白く見える、目を気にするなどの症状が見られます。
進行の程度によって症状の重さは異なります。
検査・診断
・眼科用の顕微鏡などで、角膜の状態や、異物など目を傷つける原因がないかを確認します。
・傷があると染まるフルオレセイン染色で角膜の欠損の深さや広さを確認します。
・綿棒などで目の表面をこすり顕微鏡で観察し、細菌の存在や炎症の状態を検査することもあります。
・ヘルペスウイルス感染が疑われる場合は、口や目の表面からとった拭い液をPCR検査し、感染の有無を診断することもあります。
治療
角膜潰瘍の治療法は以下のとおりです。
内科治療
角膜の欠損が浅い場合は主に内科治療になります。
・角膜保護や炎症を抑える点眼薬を点眼し、細菌感染がある場合は抗生剤の点眼液や内服も併用していきます。角膜の再生を促すため、血液から作成する血清点眼薬を使用することもあります。
・ヘルペスウイルスが原因となっている場合は抗ウイルス薬の点眼液や内服も併用していきます。
・数日ごとに角膜の状態を検査しながら、1日の点眼回数や点眼期間などを調整していきます。
外科手術
内科治療で改善認められない場合や損傷が深い場合は、角膜の修復を促すため、全身麻酔下で、角結膜の一部や瞬膜を角膜の欠損部分を覆うように縫い付ける手術をすることがあります。
病院探しのポイント
・獣医師としっかり話し合い治療を進めていく必要があります。まずはかかりつけ医に相談しましょう。
・複数回の通院や長期の入院が必要となる場合があるため、アクセスの良い病院だと通う際の負担が少なく済むでしょう。
予防
外に出る猫はケンカによる外傷や感染のリスクが高くなるため、室内飼育をすることが予防につながります。目に異物が入ったり、目の周りの皮膚炎などがあると気にしてこすり、細菌感染を起こして角膜潰瘍につながることがあります。
日頃から注意して観察し、目を気にするしぐさや、涙や目やにが多い、目が赤いなどの症状がある場合は、早めに病院へ相談することで予防や早期発見につながります。
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監修
獣医師 森敦奈
ダクタリ動物病院京都医療センター
獣医師
日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業後、ダクタリ動物病院京都医療センターにて小動物臨床に従事。
動物医療を通じて、人と動物が共存して暮らせる社会を目指しています。
皆さんが病気辞書を活用して下されば嬉しいです。
ダクタリ動物病院京都医療センターホームページ