もんみゃくたいじゅんかんしゃんと(ぴーえすえす) 門脈体循環シャント(PSS) [猫]
概要
消化管で吸収した栄養分や毒素を肝臓へ運ぶ「門脈」という血管が、肝臓に流入せずに異常な血管を介して大静脈に直接流入する病気です。
基礎知識
・健康な動物では、消化管で産生されたアンモニアなどの毒素は門脈と呼ばれる血管を経由して肝臓に運ばれ、無毒化されます。しかし、この門脈と全身性の静脈の間に異常な血管(シャント血管)があると、肝臓で解毒されないまま全身を循環してしまい、様々な不調を引き起こします。
・犬と比較して猫ではまれな病気です。
・門脈体循環シャントには先天性と後天性があり、猫の先天性門脈体循環シャントは、アメリカンショートヘア、ペルシャ、ヒマラヤン、バーミーズで発生頻度が高いとされており、後天性門脈体循環シャントは極めてまれです。
・猫では潜在精巣や銅色の瞳と関連性があることが知られています。
原因
猫の門脈体循環シャントの多くは先天性の門脈の奇形が原因で起こります。
症状
猫の先天性門脈体循環シャントは、1〜2歳未満の若齢で発症することが多く、発育不良、嘔吐、下痢、血尿や頻尿などの症状がみられます。
また、本来解毒されるべき毒素が全身を巡ってしまうことにより、よだれ、ふらつき、視覚障害、痙攣(けいれん)などの神経症状が特徴の「肝性脳症」を起こします。
検査・診断
血液検査、レントゲン検査、エコー検査、CT検査により診断します。
・血液検査で、肝臓の数値の上昇や血糖値の低下を認めます。
・レントゲン検査で、肝臓が小さい「小肝症」を認めます。
・エコー検査やCT検査で、シャント血管の位置を確認します。
治療
門脈体循環シャントの治療は以下のとおりです。
外科治療
先天性に限り、外科治療での根治が見込めます。先天的なシャント血管を、手術で閉鎖させることで肝臓の機能を改善させることができる可能性がありますが、手術の成功率はシャント血管の位置や太さなどにより異なります。
また、シャント血管を完全に閉鎖させるためには、複数回の手術が必要な場合もあります。
内科治療
手術までの管理、また手術が困難な場合などに、症状の緩和および延命を目的に行います。消化管内の毒素を抑制するための薬物治療や、低タンパク食による食事療法による肝性脳症の改善や予防が中心となります。
病院探しのポイント
検査や治療のために設備が整っている病院を紹介されることもあります。まずはかかりつけ医に相談しましょう。
予防
先天性門脈体循環シャントを予防する方法は、残念ながらありません。
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監修
獣医師 福永めぐみ
フクナガ動物病院
獣医師
日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業後、横浜市内の動物病院にて小動物臨床に従事。
現在はハバニーズのマフィンくんと共にフクナガ動物病院に勤務。
日本獣医循環器学会、日本獣医がん学会所属。
ペット栄養管理士の資格取得。
フクナガ動物病院ホームページ