ぜんじゅうじじんたいだんれつ 前十字靭帯断裂 [猫]

概要

前十字靭帯とは、膝の部分にある十字型の靭帯です。
太ももやすねの部分の骨を正常な位置に留め、正常な動きができるように調整する役割を担っています。この前十字靭帯が傷ついてしまうことを、前十字靭帯断裂といいます。

基礎知識

前十字靭帯断裂には
・急性断裂
・慢性断裂
・部分断裂
の3種類があり、それぞれ症状が異なります。

原因

前十字靭帯断裂を引き起こす原因は様々です。
・加齢や免疫疾患、内分泌疾患などの病気により靭帯自体がもろくなる
・肥満や膝蓋骨脱臼などにより、前十字靭帯にかかる負担が大きくなる
膝関節が曲がりすぎたり、伸びすぎたりという無理な力が加わるタイミングで、前十字靭帯が断裂してしまうことがあります。

症状

断裂の状態によって、症状は異なります。

急性断裂
突然足をつけて歩行できなくなったり、足をかばうような歩き方します。数日たつと通常どおりに歩けるようになる場合もあります。

慢性断裂
関節自体が変形や歪みを生じて、繰り返し異常な歩行が認められます。特に運動後などに症状が出ることが多いです。

部分断裂
最初は運動後などに異常な歩行を起こし、少し休むと治るという症状を繰り返します。

検査・診断

主に触診によって、診断されます。
膝の骨を手で動かして、安定性のチェックを行います。猫がかなり緊張してしまう場合は正確な検査のために麻酔をかけることもあります。
また、断裂の状態によっては、触診では判断できないこともあり、その場合は病歴や歩き方などを見て判断します。膝を曲げのばして半月板の損傷をチェックしたり、筋肉の付き方を確認して膝の状態を判断していきます。

レントゲン検査、エコー検査、MRI、関節鏡検査を行うことで、更に詳細な膝関節の評価を行うことができます。

また免疫介在性関節炎との鑑別が必要な場合は関節液の検査を行うこともあります。

治療

前十字靭帯断裂の治療は以下のとおりです。

内科治療
安静にさせることと内服による痛みや炎症の管理を行います。体重の軽い猫の場合は内科治療で症状が治まることが多いですが、痛みが続く場合は外科治療を行うことがあります。

外科手術
膝関節の機能を維持しながら、関節を安定させるための手術を行います。
生活の中で膝の負担が大きい事が予想される場合は、続発して関節の変性や炎症を起こしてしまう可能性が高いため、診断がついた時点で外科手術を行うことが推奨されています。

病院探しのポイント

検査や治療のために設備が整っている病院を紹介されることもあります。まずはかかりつけ医に相談しましょう。

予防

膝蓋骨脱臼、内分泌疾患、免疫介在性疾患を患っている猫では、発症しやすくなりますので、膝に負担のかかる過度な運動や体重の管理には気をつけましょう。

また、外傷を防ぐためにも、可能な限り猫は室内飼育を推奨します。

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監修

獣医師 西川身和

獣医学科卒業後、一般動物病院勤務、大学病院研修医勤務、動物福祉を学ぶ海外渡航などを経て、現在は動物の健康しつけ相談を行いながら、動物の健康や福祉に関する情報を発信しています。

愛猫4匹とまったり暮らしつつ、人間と動物のより良い関係づくりに日々奮闘しています。