のうしゅよう 脳腫瘍 [猫]
概要
脳腫瘍とは、頭蓋骨の中にできる腫瘍の総称です。脳を作る神経細胞などが腫瘍化した原発性の脳腫瘍と、ほかの臓器でできた腫瘍が脳に転移して発生した続発性の脳腫瘍があります。
脳は生命活動に重要な臓器であり、硬い骨で覆われているため手術も難しく、良性の腫瘍であっても命に関わることが多いです。
基礎知識
脳腫瘍は、頭の中のどの細胞が腫瘍化したかによって細かく分類されています。
猫ではその中でも髄膜腫(ずいまくしゅ)がよく報告されています。
髄膜腫とは脳を包んでいる髄膜というところにできる腫瘍のことです。
ほかにも、脳を形作る神経膠細胞という細胞が腫瘍化した神経膠腫(しんけいこうしゅ:グリオーマ)、リンパ腫、下垂体腫瘍などがあります。
猫の脳腫瘍の発生は犬より少ないと言われています。
原因
明らかな原因はわかっていませんが、遺伝や化学物質、外傷などが要因の一つではないかと言われています。
症状
発作を起こす、ぐるぐると旋回する、ぼーっとするなどの症状があります。ほかにも、ふらつき、首が傾く、元気がなくなる、体を触られるのを嫌がるなどの症状がみられます。
重症になると発作が止まらなくなったり、昏睡状態に陥ったりすることがあります。
検査・診断
症状、病歴、神経検査、血液検査などから、脳神経の病気を疑います。
神経検査とは、光や触覚などの刺激に対する顔の動きや体の動きを見て、脳神経系のどこに異常があるかを推測する検査です。脳腫瘍が疑われる場合はMRIやCT検査も必要になります。同時に脳脊髄液検査を行う場合があります。
確定診断には、手術で腫瘍を切除した後、病理検査が必要となります。
治療
脳腫瘍の治療は以下のとおりです。
外科手術
腫瘍のできた場所や数、サイズによって、手術で切除できるか考えます。転移してできた続発性の腫瘍や複数個発生している腫瘍は、手術で取り切ることはできません。猫の髄膜腫は、脳にできる腫瘍の中でも比較的手術で切除しやすいと言われています。
放射線治療
放射線治療のみでの完治は難しいことが多いですが、腫瘍の進行を遅らせることが可能です。また手術後の取り残した腫瘍に対しても放射線治療は選択肢の一つとなります。
内科治療
一部の腫瘍に限っては抗がん剤治療を行うことがあります。そのほか、症状に合わせて発作止めなどを内服します。
手術で腫瘍を取り切ることができれば、長く寿命まで生きられるかもしれません。しかし、何かしらの後遺症が残る可能性はあります。
手術ができない場合、予後は不良です。
病院探しのポイント
検査や治療のために設備が整っている病院を紹介されることもあります。まずはかかりつけ医に相談しましょう。
予防
残念ながら、発症を予防することは困難です。
ふらつきや体の麻痺、発作などを認めたら早めに動物病院に相談しましょう。
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監修
獣医師 吉田茉利子
花岡動物病院
日本大学生物資源科学部獣医学科卒業後、東京大学動物医療センター内科学診療科上級研修医課程を修了。現在は花岡動物病院勤務に従事。
日本獣医がん学会腫瘍科Ⅱ種認定医。
飼い主さんにも分かりやすい説明を心がけています。
ビーグル大好きです!
小さい頃の憧れは大型犬(もしくはやまいぬ)の背中に乗ることです!
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