あとぴーせいひふえん アトピー性皮膚炎 [猫]
概要
以前は食物とノミ以外の原因で起こっている繰り返す皮膚炎のことを、猫のアトピー性皮膚炎と呼んでいました。現在では発症メカニズムなどわかっていないことが多いため、過敏性皮膚炎と呼ぶことが提唱されています。
基礎知識
症状が初めて起こる年齢は3歳以下とされています。しかし、7歳以上でも発症することが報告されているため、初めて発症する年齢の傾向は特定しにくいです。
アビシニアン、ヒマラヤン、ペルシャ、デボン・レックスなどの猫種で、よく発症するといわれています。
原因
食物とノミ以外の、カビや花粉など環境性の原因物質がアレルギー反応を引き起こすことにより、様々な炎症反応が起こると考えられています。
しかし、正確なメカニズムは未だに解明されていません。
症状
皮膚に異常が現れやすい場所としては以下の部位があげられます。
・ 頭部
・首の周囲
・耳の周囲
左右対称に症状が認められることが多いです。
発症初期には、強い痒みがあるにも関わらず、皮膚に明らかな炎症症状は認められないこともあります。痒みにより、猫が自分で過剰に毛づくろいをしたり、掻くことによって脱毛や外傷を起こし、次第に皮膚の症状が重症化する傾向にあります。
2〜3mmの粒状のできものができる粟粒性皮膚炎や、脱毛し赤く湿った部位の皮膚がやや盛り上がる好酸球性肉芽腫群という症状も多く認められます。
検査・診断
主に発症年齢や症状から診断されます。診断にあたっては似たような症状を起こす皮膚病を除外しなければなりません。
・皮膚病を起こすとされる真菌(カビ)やダニの検査などを行います。
・食物アレルギーを除外するために、アレルギーを起こしにくいフードのみを一定期間食べる除去食試験と呼ばれる検査などを行います。
・アレルゲンに反応する抗体を調べる血液のアレルギー検査を行う場合もあります。
猫の場合、精神的要因や膀胱炎など他疾患からの体の違和感により過剰な毛づくろいを行うことで脱毛を起こすことがあります。症状が似ているので、診断には注意が必要です。
治療
アトピー性皮膚炎の治療は以下のとおりです。
基本的には原因物質が環境中のものであるため根治は難しく、痒みなどの症状を緩和しながら皮膚を正常に保つことを目的とした治療をします。
内科治療
シャンプー療法
皮膚の状態にあわせて、保湿性、抗菌性、角質溶解性など様々なシャンプーを使い分けます。
保湿剤の使用
皮膚のバリア機能を高めるために使用します。
内服薬
症状にあわせて、痒みや炎症を抑えるステロイド剤や抗ヒスタミン剤などを使用します。また、感染が認められる場合には抗生剤や抗真菌薬を使用します。
外用薬
皮膚の症状が広範囲でなく部分的な場合は、外用薬で抗生剤やステロイド剤などを使用することもあります。
減感作療法
皮内試験や、血液のアレルギー検査の結果に基づいて、アレルギーの原因物質を定期的に注射する方法です。根治できる可能性があります。
病院探しのポイント
・獣医師としっかり話し合い治療を進めていく必要があります。まずはかかりつけ医に相談しましょう。
・複数回の通院や長期の入院が必要となる場合があるため、アクセスの良い病院だと通う際の負担が少なく済むでしょう。
・ネコちゃんのストレスを軽減するために、アクセスの良い場所にキャットフレンドリーな病院があるか探してみるのもよいでしょう。
予防
食事やサプリメントで、皮膚のバリア機能の向上に役立つ成分を取り入れたり、住居の掃除をこまめに行い原因物質になりうる花粉やホコリ、ダニなどを除去することにより、痒みや症状の軽減が期待できます。
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監修
獣医師 西川身和
獣医学科卒業後、一般動物病院勤務、大学病院研修医勤務、動物福祉を学ぶ海外渡航などを経て、現在は動物の健康しつけ相談を行いながら、動物の健康や福祉に関する情報を発信しています。
愛猫4匹とまったり暮らしつつ、人間と動物のより良い関係づくりに日々奮闘しています。