しょくもつあれるぎー 食物アレルギー [猫]
概要
食物の中のある成分が原因で起こるアレルギーを、食物アレルギーといいます。
皮膚だけでなく、消化器、呼吸器などの部位にも症状がでることがあります。
基礎知識
猫では特に発症しやすい年齢はありませんが、比較的若い時期に起こりやすい傾向にあります。
シャムでよく発症するといわれています。
原因
食物や、そこに含まれている添加物に対するアレルギー反応によって、症状が現れます。
一般的に原因物質になりやすい食物として、牛肉や鶏肉などがあげられまが、これ以外の食物でもアレルギーを、引き起こす可能性はあります。
症状
季節に関係なく、1年中痒みがあります。
発症初期には、強い痒みがあるにも関わらず、皮膚に明らかな炎症症状は認められないこともあります。痒みにより、猫が自分で過剰に毛づくろいしたり掻くことによって脱毛や外傷を起こし、次第に皮膚の症状が重症化する傾向にあります。
典型的な皮膚の症状が起こる場所は、頭や首の周囲や、お腹、手足です。口、目、耳の周囲、首のうしろなどでは強く掻きむしった症状がでることも多いです。お腹、手足に関しては、過剰な毛づくろいによって生じた脱毛が、よく認められます。
傷ついた皮膚は細菌などに感染しやすくなるので、二次的に感染症を起こすことも多いです。2〜3mmの粒状のできものができる粟粒性皮膚炎や、脱毛し赤く湿った部位の皮膚がやや盛り上がる好酸球性肉芽腫群という症状も多く認められます。
検査・診断
一般的な皮膚の検査により、感染症や寄生虫などほかの皮膚病を除外した後、主に病歴と症状を参考に除去食試験によって診断されます。
除去食試験とは、今まで食べたことのないタンパク質を使用したフードや、アレルギーが起こりにくいように作られている除去食試験専用のフードだけを8週間与えて、痒みや皮膚の状態を観察する試験です。症状が軽減、消失すれば食物アレルギーの可能性が強く疑われます。
ただし、食物アレルギーをもっている猫では、過敏性皮膚炎も同時にもっていることも多く、診断に至るのは容易ではありません。参考のために血液を用いてアレルギー検査を行うこともありますが、猫ではその結果がどのくらい参考になるかはまだ議論されています。
また、過剰な毛づくろいによる脱毛は、痛みや不快感に伴って生じることもあるので、膀胱炎や関節炎などそのほかの病気も除外する必要があります。
治療
食物アレルギーの治療は以下のとおりです。
完治する病気ではなく、原因となる食物がわかっている場合は避け、皮膚の状態に合わせた内科治療で症状を緩和することが目的となります。生涯に渡り付き合っていく必要があります。
内科療法
外用薬
部分的に症状が出ている場合には、外用薬を使用することもあります。
食事療法
原因物質を特定できれば、それを除去した食事を与えます。特定が難しい場合は、アレルギーを起こしにくい低アレルギーフードを与えます。
内服薬
皮膚の状態によっては、抗生剤などを使用することもあります。また、痒みのコントロールのために、ステロイド剤や各種免疫抑制剤、抗ヒスタミン剤などを使用することもあります。ただし、この疾患ではステロイド剤があまり効果がない場合もあります。
病院探しのポイント
・獣医師としっかり話し合い治療を進めていく必要があります。まずはかかりつけ医に相談しましょう。
・複数回の通院や長期の入院が必要となる場合があるため、アクセスの良い病院だと通う際の負担が少なく済むでしょう。
・ネコちゃんのストレスを軽減するために、アクセスの良い場所にキャットフレンドリーな病院があるか探してみるのもよいでしょう。
予防
食物アレルギーは、原因物質を与えないことが最大の予防になります。痒みがある猫では、食事の内容に気をつけましょう。
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監修
獣医師 西川身和
獣医学科卒業後、一般動物病院勤務、大学病院研修医勤務、動物福祉を学ぶ海外渡航などを経て、現在は動物の健康しつけ相談を行いながら、動物の健康や福祉に関する情報を発信しています。
愛猫4匹とまったり暮らしつつ、人間と動物のより良い関係づくりに日々奮闘しています。