かくちょうがたしんきんしょう 拡張型心筋症 [猫]
概要
心臓の筋肉(心筋)が何らかの原因で薄くなり、心臓の収縮力が著しく低下する病気です。
収縮力が低下すると、血液を全身へスムーズに循環させることができなくなったり、心臓の中に過剰な血液を溜めこみやすくなったりすることで、心不全を引き起こします。
基礎知識
猫の心筋症には拡張型・肥大型・拘束型などがあり、肥大型の次に多いとされています。
アミノ酸の一種であるタウリンの欠乏が猫の拡張型心筋症の一因となることが解明されて以降、市販のキャットフードにはタウリンが添加されるようになり、病気の発生は激減しました。
原因
タウリン欠乏が原因の一つだと解明されています。
現在はキャットフードに十分なタウリンが添加されているため、ほとんどが原因不明です。
症状
初期では多くが無症状です。
進行すると、元気や食欲の低下、開口呼吸(口を開けて呼吸をする)、流涎(よだれが増える)、胸水・腹水の貯留などが見られるようになります。
猫の心筋症では血栓症を併発しやすく、大腿動脈血栓塞栓症を起こすと後肢が冷たくなったり、強い痛みや麻痺などがみられます。また、重度の不整脈を起こすと失神や突然死を引き起こす恐れがあります。
検査・診断
・身体検査で体温の低下、頻脈、早い呼吸、開口呼吸、粘膜の蒼白などがみられることがあります。血栓塞栓症を起こしている場合には、後肢の脈拍が触知できなくなることがあります。
・不整脈や弁膜症を合併している場合には、聴診で心雑音が聴取されます。
・レントゲン検査で、左右の心房の拡大がみられ、胸水・腹水の貯留や肺水腫を認めることもあります。
・心エコー検査で、心臓の内腔が広がりすぎていないか、心筋が薄くなっていないかを確認します。
このほかに、血液検査や心電図検査、血圧測定なども行います。
治療
拡張型心筋症の治療は以下のとおりです。
完治する病気ではなく、心臓の状態に合わせた内科治療で症状を緩和することが目的となります。
内科治療
・一般的には、血管拡張薬、強心薬、利尿薬、抗血栓薬などを状態に応じて組み合わせて使用します。食事は塩分を控え、安静な生活が推奨されます。
・血栓塞栓症を起こしている場合にはこれらの治療に加え、血栓溶解薬や抗凝固薬、抗不整脈薬などを使用し、ほとんどの場合入院での治療が必要です。
重度の不整脈や血栓塞栓症を起こすと、経過は良くありません。
また、血栓塞栓症は発症から時間が経ってしまうと死に至る危険性が高いため、異常を感じたらすぐに動物病院を受診してください。
病院探しのポイント
・生涯付き合っていく可能性のある病気です。獣医師としっかり話し合い治療を進めていく必要があります。まずはかかりつけ医に相談しましょう。
・ネコちゃんへの負担を軽減するために、アクセスの良い場所にキャットフレンドリーな病院があるか探してみるのもよいでしょう。
予防
市販のキャットフード以外のフードや、手作りのフードを与えている場合には、適切な量のタウリンの添加が必要です。
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監修
獣医師 福永めぐみ
フクナガ動物病院
獣医師
日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業後、横浜市内の動物病院にて小動物臨床に従事。
現在はハバニーズのマフィンくんと共にフクナガ動物病院に勤務。
日本獣医循環器学会、日本獣医がん学会所属。
ペット栄養管理士の資格取得。
フクナガ動物病院ホームページ