しんいんせいだつもう 心因性脱毛 [犬]
概要
心因性脱毛は、不安や欲求不満などのストレスがきっかけとなって生じる脱毛症のことを言います。
慢性化することで、脱毛だけでなく皮膚炎を起こす場合もあります。
基礎知識
慢性的な欲求不満や不安によって、同じ行動をひたすら繰り返してしまうことを、常同行動といいます。
生活の中でストレスが増えると、常同行動の頻度が増えたり程度がひどくなったりします。
原因
常同行動として体を舐めたり掻いたりする傾向のある犬で、不安などストレスにさらされることで発症します。
症状
過剰に体を舐めることで皮膚炎が起きると、かゆみによってさらに舐める行動が増加します。この悪循環により症状が進行します。
初期には脱毛や皮膚の赤みが生じます。長く繰り返すと表皮がはがれ、出血し、かさぶたができて、二次的な細菌感染により膿(うみ)が生じることもあります。犬では前肢でみられることが多いですが、そのほかの部位でも見られる場合があります。
また、心因性脱毛や皮膚炎を発症している犬では、分離不安症や雷恐怖症など、そのほかの行動学的な問題を併発している場合があります。
検査・診断
症状や経過から診断しますが、ほかの病気が隠れていないことが前提となります。
過剰に体を舐める行動は、ストレスによるものだけでなく、アレルギーや感染症による皮膚病、骨や内臓の違和感、全身性の体調不良などによっても起きる可能性があります。そのため、皮膚の検査だけでなく血液検査など全身のチェックが必要な場合があります。
治療
心因性脱毛の治療は以下のとおりです。
内科治療
抗不安薬の内服
抗菌薬の内服
細菌感染が明らかな場合は使用します。
かゆみを抑える薬の内服
皮膚炎が起きている状態では、舐める行動がなかなかやめられないため、かゆみを抑える薬を使用する場合があります。
そのほか
エリザベスカラーや服
物理的に舐められないようにします。この方法は舐める行動や皮膚炎症状が強いときに利用することがありますが、それによってストレスが増す場合もあるので、注意が必要です。
生活環境の見直し
ストレスの原因が明らかであれば、それを避けるよう努めます。欲求不満の傾向がある場合には、運動したり遊ぶ時間を十分にとります。留守番中に舐め続けてしまう場合は、独りでも遊べる玩具なども利用します。
病院探しのポイント
・かかりつけの病院がある場合は、まずかかりつけ医に相談しましょう。
・複数回の通院が必要となる場合があるため、アクセスの良い病院だと通う際の負担が少なく済むでしょう。
予防
現時点で予防法はありません。
常同行動として体を舐める傾向のある犬では、欲求不満やストレスを溜めないよう適切なコミュニケーションに努めるべきですが、具体的に必要なことやできることは個々に異なります。
部位
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監修
獣医師 松本裕子
マツモト動物クリニック
北里大学獣医学部獣医学科を卒業後、北里大学大学院博士課程を修了。獣医学博士。日本獣医皮膚科学会認定医を取得。
現在は、愛知県豊橋市のマツモト動物クリニックに勤務。
犬2頭、猫3頭と暮らしています。
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