そうぼうべんへいさふぜんしょう 僧帽弁閉鎖不全症 [犬]

概要

心臓の左心房と左心室の間にある「僧帽弁」という弁がきちんと閉じなくなることにより、血液が逆流してしまう病気です。

犬の僧帽弁閉鎖不全症の概要

基礎知識

犬の心臓には、僧帽弁(左房室弁)大動脈弁、三尖弁(右房室弁)、肺動脈弁の4つの弁があります。これらの弁は心臓の収縮に合わせてドアのように開閉し、血液が逆流しないようにしています。

これらの弁に何らかに異常があらわれることを「弁膜症」といい、僧帽弁閉鎖不全症では左心房と左心室の間にある僧帽弁がうまく閉まらなくなることにより血液が逆流してしまいます。心臓から全身へ血液を送るポンプとしての機能が低下して、様々な症状を引き起こします。

犬の心疾患のうち、75〜85%が僧帽弁閉鎖不全症です。高齢の小型犬で多く、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、チワワ、ヨークシャー・テリア、マルチーズなどで特に多くみられます。

原因

心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁が分厚く変性したり、弁が裂けてしまったりすることで逆流を起こします。変性を起こすはっきりとした原因はわかっていません。

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルでは遺伝的にこの病気を起こしやすく、若齢でも発症することがわかっています。

症状

初期段階では無症状のことも多いですが、病気の進行に伴い、元気・食欲の低下、咳、運動を嫌がるなどの症状がみられます。

重度なものでは失神やチアノーゼ(舌の色が紫色になる)などの呼吸困難や循環不全の症状がみられ、急性心不全を起こすと肺水腫を併発し、死に至るおそれがあります。

検査・診断

・身体検査で、呼吸の状態や咳の有無、粘膜の色などを確認します。
・聴診で、心雑音の程度や種類、肺の音に異常がないかを確認します。
・レントゲン検査で、心拡大や肺水腫の有無を評価します。
・心エコー検査で、僧帽弁の状態を確認し、確定診断をします。また、心臓内のほかの部位にも異常がないかを確認します。
・このほか、血圧測定や心電図検査も併せて行い、全身の状態を把握する目的で血液検査を行う場合もあります。

治療

僧帽弁閉鎖不全症の治療法は以下のとおりです。

内科治療
・心臓の状態に合わせて、血管拡張薬、強心薬、利尿薬などの薬を組み合わせて使用します。
・塩分を控えた食生活と、激しい運動を避けた生活が推奨されます。
・呼吸困難やチアノーゼを起こしやすい状態のときは、病院もしくは自宅での酸素吸入が必要な場合があります。
・肺水腫を起こしている場合には、入院による治療が必要です。

外科治療
人工心肺装置を用いた僧帽弁形成術により、根治できる可能性があります。

病院探しのポイント

生涯付き合っていく可能性のある病気です。検査や治療のために設備が整っている病院を紹介されることもあり、紹介先での治療が終了しても、かかりつけ医での定期的な通院が必要となる場合もあります。まずはかかりつけ医に相談しましょう。

予防

現時点では発症自体を予防する方法はありません。
僧帽弁閉鎖不全症になりやすい犬種は、定期的な聴診や健康診断を受けることで、早期発見・早期治療につながります。

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監修

獣医師 福永めぐみ
フクナガ動物病院

日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業後、横浜市内の動物病院にて小動物臨床に従事。
現在はハバニーズのマフィンくんと共にフクナガ動物病院に勤務。
日本獣医循環器学会、日本獣医がん学会所属。
ペット栄養管理士の資格取得。


フクナガ動物病院ホームページ

https://fukunaga-ah.com/