てんぽうそう 天疱瘡 [犬]

概要

天疱瘡は、自分の免疫が自身を攻撃して皮膚に症状を引き起こす、自己免疫性疾患です。
そのため、天疱瘡は人やほかの動物にはうつりません。

基礎知識

おおまかに分類すると、皮膚に症状がみられる落葉状天疱瘡と、皮膚と粘膜に症状がみられる尋常性天疱瘡があります。
犬では落葉状天疱瘡の方が圧倒的に多く認められます。

原因

自分の免疫が自分の皮膚の構成組織を攻撃することにより、発症します。
自然発生だけではなく、薬や、リンパ腫などの腫瘍によって発生することも知られています。薬による発症はラブラドール・レトリーバーや、ドーベルマンで多く認められます。

症状

多くの症例では夏に発症したり、悪化する傾向にあります。
鼻すじ、耳、目の周囲など顔によく症状が発生します。まれに顔には症状がでず、体や肉球のみに症状が認められることもあります。皮膚に赤みがでたり、丘疹(小さいできもの)、内部に膿のたまったできもの、かさぶた、掻き壊しの症状などが認められます。強い痒みを感じる場合や、発熱などの症状がでることもあります。

検査・診断

主に、症状からこの病気を疑います。
・ほかの寄生虫による皮膚病を除外するために、一般的な皮膚の検査を行います。
・ できもの内部の液体の細胞の検査や、症状の出ている部分の細胞を顕微鏡で調べます。
・確定診断には症状が出ている部分の皮膚を、少し切り取って行う病理検査が必要です。

治療

天疱瘡の根治治療の方法はありません。
そのため、症状の緩和を目的として生涯投薬が必要になります。

内服薬
ステロイド剤や各種免疫抑制剤を使用します。
また、2次的に細菌感染(膿皮症)を起こしている場合などは抗生剤やビタミン剤を併用します。

病院探しのポイント

・かかりつけの病院がある場合は、まずかかりつけ医に相談しましょう。

・定期的な通院が必要となる場合があるため、アクセスの良い病院だと通う際の負担が少なく済むでしょう。

予防

自己免疫疾患のため、現在のところ予防法はありません。

天疱瘡の症状悪化の原因として、紫外線やノミの寄生も関与していると考えられています。天疱瘡の犬では直射日光を避けること、ノミの予防をきちんと行うことが重要です。

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監修

獣医師 西川身和

獣医学科卒業後、一般動物病院勤務、大学病院研修医勤務、動物福祉を学ぶ海外渡航などを経て、現在は動物の健康しつけ相談を行いながら、動物の健康や福祉に関する情報を発信しています。

愛猫4匹とまったり暮らしつつ、人間と動物のより良い関係づくりに日々奮闘しています。