きゅうせいじんしょうがい 急性腎障害 [犬]

概要

腎臓には、おしっこの量を調節して体内の水分量を一定に保つはたらきがあります。
急性腎障害は、数時間から数日という短期間のうちに急激に腎臓の機能が低下し、体内の水分を正常に保てなくなった状態をいいます。

犬の急性腎障害の概要

基礎知識

急性腎障害は原因がどこにあるかによって、腎前性・腎性・腎後性の3つに分類されます。
犬の急性腎障害では腎性のものが約60%を占めるとの報告があります。

死亡率は原因によって異なりますが、およそ半数が死に至る可能性があると報告されています。

治療を行っても、腎機能が完全には元に戻らず慢性腎臓病へと移行する可能性もあります。

原因

腎前性
腎臓に流れ込む血液の量が減ってしまうことによって起こります。脱水や出血、心臓病などが原因となります。

腎性
主に腎臓に毒性のある薬物や毒物によって、腎臓そのものに障害が生じることで起こります。
犬で腎性腎障害を起こす薬物・毒物としては、レーズン、ブドウ、エチレングリコール、アミノグリコシド、NSAIDs、アンホテリシンBなどが代表的です。レプトスピラ感染症も原因となります。

腎後性
尿路(尿管・膀胱・尿道)の閉塞などにより、尿が体外に排出されないことが原因で起こります。

症状

元気や食欲が突然なくなり、尿の量が減少したり全く出なくなります。

腎前性ではこれらの症状の前に、下痢や嘔吐が続くことがあります。

腎後性では排尿がない、もしくはごくわずかしか尿が出なくなります。特に尿道閉塞を起こしている場合は、排尿姿勢になっても尿が出ないという症状がみられます。

検査・診断

身体検査、血液検査、尿検査、画像検査を行い、腎障害の原因がどこにあるのかを調べます。

腎前性や腎後性の所見がみられない場合には、中毒の可能性がないかを調べます。

また、尿の細菌培養検査を行う場合もあります。

治療

急性腎障害の治療は以下のとおりです。

内科治療
・感染や尿路閉塞が原因の場合には、それに応じた治療を行います。

・多くの場合、早急な点滴が必要となります。点滴により脱水が改善しても、尿が少なかったり出ない場合には、利尿薬や腎臓への血流を増やす薬を使用する場合もあります。

・食欲不振や嘔吐がみられる場合には、消化器に対する薬を使用します。

そのほか
内科治療を行っても改善がみられない場合には、腹膜透析や血液透析が選択肢となりますが、実施できる施設は限られています。

予後は原因によって異なりますが、死亡率は全体で約50%、感染や結石による尿路閉塞では20〜30%、毒物や薬物が原因の場合には80〜90%と言われています。

病院探しのポイント

・かかりつけの病院がある場合は、まずかかりつけ医に相談しましょう。

・緊急治療が必要となることが多いので、急ぎ診てもらえる病院を探しましょう。また、このような緊急事態に備えて、かかりつけの休診日や夜間診療をしている病院をあらかじめ調べておきましょう。

予防

原因となる病気(尿路閉塞や脱水をおこす病気)がある場合には、その病気の早期発見・早期治療が重要となります。

毒物や薬物を摂取させないよう、身の回りのものや生活環境を常に整えることも予防につながります。

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監修

獣医師 福永めぐみ
フクナガ動物病院

日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業後、横浜市内の動物病院にて小動物臨床に従事。
現在はハバニーズのマフィンくんと共にフクナガ動物病院に勤務。
日本獣医循環器学会、日本獣医がん学会所属。
ペット栄養管理士の資格取得。


フクナガ動物病院ホームページ

https://fukunaga-ah.com/