かんこうへん 肝硬変 [猫]

概要

長期的な炎症によって肝臓が硬くなり、肝機能が低下する病気です。

基礎知識

肝臓で炎症が起こると、炎症で障害された細胞を修復するために結合組織という線維が作られます。この線維が多くなると正常な肝臓の細胞の働きを妨げ、肝臓が十分に機能できなくなります。その結果、肝臓で作られるタンパク質やホルモンが不足し、薬物や毒物の解毒ができなくなるなど、様々な症状があらわれます。

線維化した肝臓は多くの場合、元には戻らず、肝不全へと進行していきます。肝硬変により、肝臓を迂回するように新しい血管が作られる門脈体循環シャントが併発することがあります。

肝硬変は猫ではまれです。

原因

慢性肝炎が原因となります。

慢性肝炎は原因がわからない特発性のものや、免疫に関わるもの、以下のような原因に繰り返しさらされることで発症するものがあります。

毒物の摂取
毒性のあるキノコや観葉植物、キシリトールやカビ毒、鉛や銅、殺鼠剤や除草剤、一部のアロマオイルなど

薬物の投与
人用の鎮痛剤(アセトアミノフェン)、一部の抗けいれん薬や免疫抑制剤など

感染症
トキソプラズマ症、レプトスピラ症、猫伝染性腹膜炎など

ほかの病気
熱中症、急性膵炎、播種性血管内凝固症候群(DIC)、敗血症、ショック、重度の貧血など

症状

元気や食欲の低下、嘔吐や下痢、水をたくさん飲む、尿量が増える、体重の減少などの症状があらわれます。
さらに進行すると、黄疸(皮膚や目など体の表面が黄色く変色する)、腹水、痙攣(けいれん)などの神経症状をあらわします。最終的に肝不全へ進行していきます。

検査・診断

問診で原因となるようなものがないかを調べ、血液検査で肝臓の数値を中心に確認していきます。また、エコー検査やレントゲン検査で肝臓の大きさや状態などを確認することもあります。

正確な診断には、全身麻酔下でお腹を開いて肝臓の組織を採取して、肝臓の病理検査をすることが必要です。

治療

肝硬変の治療は以下のとおりです。

内科治療
根本的な治療法はなく、点滴やビタミン剤、毒素の吸着剤の投与などの対処療法や、不足した栄養素を補うための特別療法食を用いた食事療法が中心になります。

線維化の進行を遅らせるためにステロイドを含む内服薬を使うこともあります。毒物や薬物の摂取が疑われる場合は摂取をさせないようにし、ほかの病気が原因の場合はその治療を併せて行います。

病院探しのポイント

・獣医師としっかり話し合い治療を進めていく必要があります。まずはかかりつけ医に相談しましょう。

・複数回や長期の通入院が必要となる場合があるため、アクセスの良い病院だと通う際の負担が少なく済むでしょう。

予防

腐敗した食べ物や観葉植物、除草剤などの身近なものでも肝炎になることがあります。その子の周りに毒となるものがないか注意してあげてください。

感染症は予防できるものもあります。定期的なワクチン接種を行いましょう。

早期発見治療ができるように定期健診をお勧めします。

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監修

獣医師 森敦奈
ダクタリ動物病院京都医療センター
獣医師

日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業後、ダクタリ動物病院京都医療センターにて小動物臨床に従事。

動物医療を通じて、人と動物が共存して暮らせる社会を目指しています。
皆さんが病気辞書を活用して下されば嬉しいです。


ダクタリ動物病院京都医療センターホームページ

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