きょだいしょくどうしょう 巨大食道症 [犬]

概要

食道の拡張と動きの低下を特徴とする症候群(同時に起こる一連の症状)です。
食道拡張症ともよばれます。

基礎知識

先天性のものと後天性のものがあります。

原因

先天性の巨大食道症の多くは特発性(原因不明)です。
後天性の場合、特発性のものと、以下の病気に続発して起こるものがあります。

神経と筋肉の病気
重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎、脳腫瘍、ボツリヌス中毒など

食道の閉塞性疾患
食道腫瘍、右大動脈弓遺残、食道狭窄症、異物など

中毒
鉛、殺鼠剤など

そのほか
胃の幽門狭窄、副腎皮質機能低下症(アジソン症)、甲状腺機能低下症など

症状

食事摂取後、数分〜数時間で食事を吐き出す「吐出」が特徴です。頻度は病状により様々です。食事を飲み込めない嚥下困難がある場合には、体重が減少していきます。

また、食道炎が併発していると、食欲不振やよだれがみられることもあります。
誤嚥性肺炎を併発している場合には、呼吸困難や発熱を伴う場合があります。

検査・診断

胸部レントゲン検査で、食道が拡張している、かつ、食道に異物などの詰まりもない場合に、巨大食道症と診断します。
通常のレントゲン撮影ではっきりしない場合には、消化管を造影して撮影することもあります。
後天性の巨大食道症の場合は、その原因となる病気について詳しく調べる必要があります。

治療

巨大食道症の治療は以下のとおりです。
巨大食道症は、原因となる病気が別にある場合にはその治療を行います。

内科治療
・対症療法として高い台の上に置いた流動食を後ろ足で立った姿勢のまま食べさせる「テーブルフィーディング」が効果的な場合もあります。食後もしばらく立ったままの姿勢で保つことで、重力によってスムーズに食道を通過するように促します。

・免疫の関与が疑われる免疫介在性疾患に続発している場合には、ステロイドなどの免疫抑制剤を使用することがあります。

・食道炎を併発するケースが多く、抗生剤や粘膜保護薬、吐き気止め、胃薬などを組み合わせて治療します。

重度の巨大拡張症は難治性の場合が多く、誤嚥性肺炎を合併すると死亡リスクが高まります。

犬の巨大食道症の治療

病院探しのポイント

生涯付き合っていく可能性のある病気です。獣医師としっかり話し合い治療を進めていく必要があります。まずはかかりつけ医に相談しましょう。

予防

巨大食道症は原因が不明なことが多く、残念ながら明確な予防法はありません。

タグ

部位

関連する病気

監修

獣医師 福永めぐみ
フクナガ動物病院

日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業後、横浜市内の動物病院にて小動物臨床に従事。
現在はハバニーズのマフィンくんと共にフクナガ動物病院に勤務。
日本獣医循環器学会、日本獣医がん学会所属。
ペット栄養管理士の資格取得。


フクナガ動物病院ホームページ

https://fukunaga-ah.com/